明解TS入門④
この記事は、徒然 Advent Calendar 2020 - Adventar の24日目の記事となっております
こんばんわ、アンミカドラゴンです。
本日も明解TS入門やっていきたいと思います。
卒論のことを考えると、万力ですりつぶされているような気持になりますが、何とかこちら、書き切ることができました。
意味ありげな描写もありますが、結局、そこまで頭を使わず読んでもらうのが一番かもしれません。
それでは、本編の方、どうぞ。
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友「君しか見えないんだ」4話
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友『また......会いましたね』
婆『あら、あんたかい......』
友『......』
婆『はぁ......あんたは、本当に馬鹿な人間だね』
友『......』
婆『このままだとあんた......自分がどうなるのか、わかっているんだろう?』
友『......もちろんです』
婆『あんたの願いを叶えてやったんだ、それを反故にするならば、それ相応の報いを受けてもらう』
友『......はい』
婆『分からん人間だね......その身体になって、いったい何がしたかったというんだい?』
友『僕は......』
===
友「......ぅん......あれ?僕、いつの間に寝てたんだろ」
友「......男......は委員会だよね......」
友「......行かなきゃ」
ーーー
女「......聞いて欲しい......話があるの」
男「......何だよ、改まって」
女「そ......そうね、何から話せばいいかしら......」
男「......話しにくいことなのか?」
女「いや......そういう訳じゃ......ないわ」
男「そうか......じゃあ......ゆっくり話してくれ」
女「ありがと......」
男「おう.......」
女「......私たちがさ、最初に話したときのこと覚えてる?」
男「......えーっと、あれだろ......俺が教科書忘れて......」
女「そう、それで隣の席だった私に、見せてくれって」
男「あー、その節は申し訳ない」
女「いいわよ......でも、あなたいっつも忘れ物とかばっかりでさ、友ちゃんにばっかり頼って」
男「いや、ほんとにな......」
女「幼馴染とはいえ、財布忘れて女の子の友ちゃんからお金を借りる姿なんて、見てられなかったわ......」
男「うっ......嫌なところ見てるなぁ」
女「でも、何だかんだ嫌がってない友ちゃん自身に興味が湧いたのが、友達になったきっかけだったんだけどね」
男「なるほどな」
女「今年もクラス一緒になったと思ったら、委員会決めのときに限って友ちゃんが休んじゃってて、男が一人で今の委員やらされそうになってるの見て、私もやろうかなって思ったりとか」
男「そんなこと思ってたんだな......いや、そう考えるとほんとにありがたいな......」
女「ほんとよ......あなた一人だったら今頃どうなってるかしら」
男「......考えたくもないな」
女「ふふ......でも、それであなたと話すようになって......結構あなたのことを考えるようになったの」
男「そう......なのか」
女「あなたはどうして忘れっぽいんだろう、あなたはどうしていつも授業で寝てるんだろう、とか」
男「......ろくなこと考えてないな」
女「ふふ、でもそれだけじゃないのよ......友ちゃんとあなたはどういう関係なんだろう、とか」
男「......」
女「......あなたは私のこと、どう思ってるんだろう、とか......」
女「.......好きなの......あなたのこと」
男「......そう......か」
女「......私のこと......どう思ってる?」
男「......そうだな......友の目が見えなくなるまでは、正直、お互いに軽口を叩き合うような、腐れ縁みたいなもんだと思ってた」
女「......そう」
男「でも、最近は俺も色々なことを考えるようになって、女がどれだけ俺達のことを想って、助けてくれてるのかに気付いたんだ」
女「......」
男「思えば、それまでも、女には色々世話かけっぱなしでさ、それでも愛想つかさないでいてくれて、感謝してる......」
女「......うん」
男「勉強にも委員会にも真剣に取り組んでて、それでいて他人を想える優しさがあって......」
女「そんなこと......」
男「......だから、きっと俺も、女のことが好きなんだと思う」
扉 ガタガタッ
女「......それって」
男「......でも、それよりも......今は......友のことが心配なんだ」
女「......っ!」
男「友は、今こうしてる間も、暗闇の中で一人でいる......不安で、恋愛とか、先のことなんか考えられないこらいに」
男「そんな状態の親友を差し置いて、俺だけがそういうことをするのは、ずるいと思う」
男「女の気持ちは嬉しいし、こんな返事をして傷つけてしまうかもしれないことは分かってる」
男「それでも、俺は友のそばにいたいんだ......」
女「そう......なんだ......気持ちは......決まってるんだね」
男「ごめん」
女「いや、謝らないで......正直に答えてくれてありがとう......」
男「......」
女「私のことはいいから......友ちゃんのところ、行ってあげて......」
男「でも......」
女「心配なんでしょ?いいの......私も、少し一人になりたい気分だから」
男「そうか......」
女「うん......じゃあ、また明日」
男「おう......」
扉 ガラガラ
男「!......これは......」
男(何で、友の杖が、こんなところに落ちてるんだ!?)
男「友っ!」ダッ
男「はぁ...はぁ......」
男(図書室......友は委員会の間、ここで待ってるって言ってたはずだが......)
扉 ガラッ
男「っ!」
男(やっぱりいないか。友......いったい何処に行ったんだ......)
===
友「僕は、それも人魚姫の決断だったんだと思う、王子様が素敵な人を見つけて幸せになれるんなら、自分は邪魔しちゃいけないって。そう思えたなら、たとえ泡となって消えてしまったとしても、それは決して不幸なことじゃないと思うな」
===
男(まさか......友は......)
ーーー
友「はぁ......やっぱり、ここは落ち着くな......」
友「......男、ごめん......」
扉 バンッ
男「友!」
友「!......男?......」
男「何してんだよ、お前!屋上で!」
友「............風に.......当たりに来ただけだよ」
男「......ひとりでか?」
友「うん、何回も来たから、道も覚えてるからね。まあ、すぐ戻るつもりだったんだけど」
男「聞いてたんじゃないのか?」
友「......何のこと?......それより、委員会はもう終わったの?」
男「.....」
友「どうしたの?」
男「杖が......教室の前に落ちてたんだ......」
友「!」
男「委員会が終わって俺が教室に戻るときには、確かに何もなかったはずだ」
友「......」
男「聞いてたんだろ?ドアの外で......杖を忘れて屋上に来るほど動揺することを」
男「教えてくれ......何が、お前をそんなに追い詰めたんだ......」
友「......言って......何になるのさ」
男「何にって......友が悩んでるなら......力になりたいんだ」
友「......気持ちはありがたいけどさ、言わない方がいいこともあるんだよ......」
男「っ......それでも、友一人で抱え込むなんて絶対間違ってるだろ......俺にも、背負わせてくれ」
友「何でだよ......これは僕の問題なんだ!男には関係ないだろ!」
男「関係なくない!お前だけが苦しんでる姿なんか、もう見たくないんだよ!」
友「うるさい!見たくないなら、出て行ってよ!僕のことなんて放っておいてくれ!」
男「絶対いやだね、友が話すまで、俺はここにいる」
友「っ!それなら、僕が出て行くよ」
男「おい!友!」ガシッ
友「放してよ!何で!何で僕を一人にしてくれないんだ!」
男「約束したからだよ!」
友「!」
男「不安で、取り乱したときに、友のそばにいるって......約束したから」
友「......」
男「そうだろ?」
友「......なんで、そういうことばっかり覚えてるんだよ......」
男「当たり前だろ......」
友「............分かったよ......話すから......」
男「ありがとう、頼む......」
友「ひとつだけ、お願いしてもいい?」
男「もちろんいいけど、どうしたんだ?」
友「この話を聞いても、僕と......友達のままでいて欲しいんだ」
男「......当たり前だろ、約束するよ」
友「ありがとう......」
友「僕が女の子の身体になったのはさ、僕が望んだからなんだ」
男「夢の中での話か?」
友「そう、夢の中で、願いを叶えてくれるって言われて、適当に答えた訳じゃなくて、ずっと僕は女の子になりたかったんだ」
男「そう、だったのか......」
友「何でだと思う?」
男「何でって.....」
友「僕さ......男のこと、好きだったんだ......」
男「......それは、友達としてって訳じゃないよな」
友「うん、恋愛対象として、ずっと好きだった」
男「そうか......」
友「だからさ、僕が女の子の身体になれたとき、実はすごく嬉しかったんだ」
友「これで、もしかしたら男が振り向いてくれるんじゃないかって、舞い上がってた」
友「でも、そんなことよりも、男は目が見えなくなった僕のことを心配してた......」
友「最初は、それでもいいって思ったんだ、男が僕のことを恋愛対象として見てくれなくても、僕のことを想って、そばにいてくれるなら、それでいいって」
友「でもさ......僕は、もっともっとそばにいて欲しい、大好きな男を独り占めしたいって、気持ちが止まらなくて」
友「男は純粋に僕のために手を尽くしてくれてるのに、僕は、身勝手に男のことを求めて」
友「そんな自分が許せなくて、男には、僕なんかじゃない人に、その想いを向けて欲しいって思うようになったんだ」
男「......そうだったのか」
友「それなのに、僕の心は中途半端でさ......いざ、女さんと男が付き合うってことを想像したら、頭の中ぐちゃぐちゃになって......気付いたらここにいたんだ......」
男「あー......」
友「でも、やっぱり、男には、僕のことなんか気にせず、女さんと幸せになって欲しいな」
男「そうか、やっぱり、最後まで聞いたわけじゃないんだな」
友「え?」
男「断ったんだよ、女さんの告白」
友「......そんな、何で!女さんのこと好きって!」
男「好きだけど......友のことが頭から離れなくてさ.....」
友「っ!」
男「俺の中で友が最優先なのは変らないから、そんな調子だと女さんと二人で会う時間も取れないだろうし、中途半端に恋人になって二人に迷惑をかけるくらいなら、って思って」
友「......あはは......意外と男って冷静で合理的だよね......」
男「......女さんが本気なのは伝わったから、俺も本気で考えなきゃって思ったからな」
友「でも、やっぱりおかしいよ、何で、男の中でずっと僕が最優先なのさ」
男「はぁ......これはお互い様なのかも知れないけどさ、俺もこれまで、友に助けされてばっかりなんだよ」
友「え?」
男「忘れっぽくて勉強もろくにできない俺が、ここまでやってこられたのは友のおかげなんだ」
男「俺だって、友がどうして俺のことを気にかけてくれるか分からなくて、罪悪感を感じたこともあったくらいでさ」
男「でもな、そんなことを思ってても、友は一つも喜ばないことに気付いてさ。その代わりに、友が困ったときには、出来る限り俺が力を貸して、恩を返そうって思ってたんだ」
友「そう......だったんだね」
男「だから、友も俺のすることに罪悪感なんて感じて欲しくない」
友「そっか......ごめん」
男「いや、こちらこそ言葉足らずで、友に負担をかけて、悪かった」
友「ううん、ここで男の気持ちが聞けて良かった」
男「俺も、友の気持ちが聞けて良かったよ」
友「あ......// .ごめん、僕、男が女さんと付き合ったと思って、告白みたいなこと言っちゃってたよね」
男「そのことなんだけどさ、少し、時間をくれないか?今のお前を、しっかり恋愛対象として見たことがある訳じゃないからさ、お前の気持ちを踏まえて、しっかり考えたいんだ」
友「本当?そんなこと言ってくれるなんて、夢みたい......」
男「いや、まだOKとは言ってないぞ......」
友「でも、OKじゃなくても、このままそばにいてくれるんでしょ?」
男「まぁ......そりゃあな」
男「はぁ......とりあえず、お前が変な気を起こさなくて良かったよ」
友「変な気って?」
男「いや、屋上にいるもんだから、もしかして飛び降りようとしてるのかもって、思ってな」
友「飛び降りるって......フェンスを越えて?」
男「まあ、確かに俺でもあのフェンスを越えるのは無理だな......」
友「あはは、もし越えられたとしても、飛び降りる勇気は僕にはないかな」
男「それなら、どうして屋上に来たんだ?」
友「えーっと、そう言われると、飛び降りとそこまで変らないかもしれないけど」
男「え?」
友「さっき、夢の中で、僕がお願いを叶えてもらったって言ったよね」
男「ああ、言ってたな」
友「その時に、もし僕が女の子になっても、男と結ばれなければ、魂を取られちゃうよって、警告されたんだ」
男「魂って、また非現実的なものが出てきたな......って、もしかして魂を取られると......」
友「多分、死んじゃうんじゃないかな?」
男「死ぬって、お前......」
友「......まあ、男と一緒にいられないなら、別に死んでも構わなかったし」
男「いやいやいや、お前こそおかしいじゃねぇか」
友「恋ってそういうもんでしょ?」
男「そう......なのかぁ?」
友「それで、もし死ぬとしたら、男の前では死にたくないって思ったら、自然とここに来てたんだ」
男「でも、ひどいもんだよな、一つ願いを叶えるのに、二つも代償が必要なんてな」
友「二つって?」
男「え、いや、目だけじゃなくて、魂まで取られるかもしれないなんてな」
友「あ、ああ、そうだね、僕もこんな事になるなんて思わなかったよ」
男「?......まあとにかく友の魂が取られなくて良かったよ」
友「まあ、夢で見ただけだから、ほんとに取られるかは分からなかったけどね」
男「いや、実際女にはなれたんだから、結構信憑性はある気がするけどな......」
友「そうかな?」
友「でも、実は......目が見えなくなったこと自体は、そんなにショックじゃないんだけどね」
男「......それはどういう?」
友「今なら誤魔化さずに言えると思うから、言うんだけどね」
友「目が見えてた頃も、本の外の世界に全然興味なんてなくてさ」
友「そこで唯一、僕が見たいって思えるのは、男だけだったんだ」
友「今は、真っ暗で何もない世界でも、男がいれば、寂しくなくて」
友「あったかい光のようなもので、視界がいっぱいになるんだ」
友「......だからいつだって僕は......」
友「君しか見えないんだ」
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婆『あら、あんた、上手くやったらしいね』
友『ええ、おかげさまで』
婆『結局、全部掌の上ってことかい』
友『何のことです?』
婆『魂を預けるから盲目の女にして欲しい、って言われたときは耳を疑ったが、全部あんたの言った通りになっちまったじゃないか』
友『運が良かっただけですよ、それ相応のリスクは負いました』
婆『どうだか......一人の女の恋心も弄んで、どの道、あんた、天国には行けないだろうね』
友『その時は、神様と取引でもしますよ』
婆『はぁ......全く......罰当たりなことだね......』
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ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
拙い部分は多々あったかもしれませんが、お付き合いいただきとても嬉しいです。
個人的な見解を言わせてもらうと、このタイプのTS及び精神的BLの良さは、一般的な恋愛の文脈で言うところの、障害があるほど燃えるってやつだと思います。
常識や倫理観の壁を越える愛が、人を動かすのは必然ですね(?)
ヤンデレにも通ずるものがあると思います。
それでは、明解ヤンデレ上級編、これにて終了です。
改めて、ありがとうございました。